ソニーが子会社上場しているソニーフィナンシャルホールディングスをTOBして完全子会社化の発表をしたようである。約3,955億円を投じると
報じられている。
ソニーフィナンシャルが上場してからは、ある程度年数が経過しているが、親会社の都合でIPOしたり子会社化したりするのは、ソニーの昔からの体質とも。昨年は旧社名ソニー不動産のSREホールディングスがIPOしており、グループ戦略がわかりにくい。合弁事業の不動産は切り離し、金融(フィンテック)を強化とも考えられるが、長期保有したい投資家には不都合である。結局、子会社上場は独立性は維持できないのではと言われてしまう。
ソニーがソニーフィナンシャルHDを子会社化すべきという噂や上場廃止するのではないかとの思惑は
過去にもあった(ウォールストリートジャーナル2016年、
Bloomberg2015年)が、現実化した。儲かるなら完全子会社化、儲からないなら子会社のままという親会社の理屈だろうか。
《ソニーフィナンシャルHD(8729)のIPO時と上場廃止時時価総額等》
上場日:2007/10/11
主幹事証券:野村證券
時価総額(公募):870,000 百万円
時価総額(初値):913,500 百万円
上場時資金調達額:30,000百万円
上場時売出総額:187,600百万円
↓
上場廃止発表日:2020/5/19
時価総額:1,049,430百万円
※実際には前日にリーク大幅高。
TOB総額:39,550百万円
公開買付代理人:野村證券
上場してから12年半が経過しており、時価総額はやや増加しているため、IPO時によりも安く買った印象はない。単に高く売って安く買い戻すとはいいにくいのかもしれない。IPO時も上場廃止時も同じ証券会社がアドバイスしている。
《ソニーフィナンシャルHDのIPO時と上場廃止時の業績比較》
12年で時価総額はあまり増加していないものの、業績は飛躍的に拡大しているようだ。親会社が買いたくなるのも理解できる。
決算期(単位:百万円) |
経常収益 |
経常利益 |
当期純利益 |
純資産 |
2007年3月期 |
759,280 |
18,354 |
10,021 |
270,179 |
|
↓ |
↓ |
↓ |
↓ |
2020年3月期 |
1,781,420 |
111,880 |
74,429 |
691,978 |
なるほど。利益水準は5~7倍になってるが、時価総額は20%程しか上がっていない。であれば、個人投資家なんか追い出して利益全部ソニーに取り込もうという発想はごく普通。市場の評価が低すぎたから買ったというのは普通の考え方だろうし、仕方がない。しかし、子会社上場には子会社が儲かると親会社が上場廃止にしてくるリスクがあるというのは肝に銘じるべきである。結局上場子会社のサラリーマン社長はTOBに賛同する選択肢しかないため、個人投資家は無視されることになる。